社用車はリースでした。
普通の会社なら、「傷つけないように」と言われます。
この会社では違います。
社長自らカッターで切り刻みました。
しかも、その理由を聞いて私は二度驚くことになります。
その中の一台が、プロボックスでした。
ほぼ社長専用車です。
雪の日は、この車で帰ります。
理由はスタッドレスを履いているからではありません。
「ぶつけてもいい」
と思っているからです。
そもそも、ノーマルタイヤで乗るなと言いたいですが…
ちなみに過去記事でも少し触れましたが、社員がぶつけると修理代は自腹です。
リース車――
つまり会社の所有物ですらないのに、
まるで自分の車のように扱い、
挙げ句の果てにはそれを理由に社員からお金を取る。
なんともあくどいやり方でした。
そんなプロボックスで起きた、ある日の出来事です。
午前中。
社長が外出先から戻るなり、プロボックスの掃除を始めました。
珍しいこともあるものだと思って見ていると、

おい、手伝え。
っていうか俺忙しいから代われ
もう、ため息しか出ません。
事情を聞くと、
運転中にコーヒーをこぼしたそうです。
たしかに車内はコーヒーの匂いがしました。
……それ以上に強烈な匂いもしました。
社長が履いていた、
ひと昔前に流行った先の尖った革靴。
さっきまで履いていたのでしょう。
これ以上は言いません。
お食事中の方、申し訳ありません。
もともとなかったやる気がさらに失せたので、
適当に拭き、
ファブリーズをして窓を開け、
そのまま放置しました。
しばらくして社長が戻ってきました。

くさい。
お前どこ掃除したんや
心の中で思いました。

知りません。
自分で掃除してください
もちろん口には出せません。

全体拭いてファブリーズしましたよ

もういい。俺がやる
そう言うと、
おもむろに店からカッターを持ってきました。
ザクッ。
こぼした箇所の純正フロアマットを切り抜き始めました。
……これはリース車です。
常識的な考えの持ち主なら、
この時点で意味がわからないと思います。
元社畜もそうでした。
次にホースを持ってきて、
水道につなぎました。
まさか…!
そのまさかでした…
くり抜いた穴へ、
ジャバジャバと水を流し始めたのです。
もう一度言います。
これはリース車です。
水抜き穴から水が抜けるのを確認すると、
一言。

こうやれば匂いなくなるだろ
とご満悦のドヤ顔。
そうでしょうね。
発生源を切り刻んで、
水で流したんですから。
ちなみに、この社長の口癖は
常識的に考えたらわかるだろ
でした。
これが、コーヒーをこぼした時の
社長の言う「常識的な考え」でした。
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